サンガツサンチ(旧暦の3月3日)は海へ行こう

奄美大島・加計呂麻島では旧暦に従って行事ごとが行われることがいろいろあります。その中でも春の風物詩「サンガツサンチ」についてご紹介いたします。

「サンガツサンチ」ってなあに?

旧暦の3月3日のことで、「浜下れ(ハマオレ)」という伝統行事です。
初節句の赤ちゃんがいるお家は赤ちゃんの無病息災を願って、足をチョンチョンと海につけたりもします。
奄美大島では「海開き」と称して、お祈りを捧げたりするエリアもあるようですが、加計呂麻の海は1年中開かれているので、特に「海開き」の日はありません。

お昼頃に大きく潮が引くので、集落のみんなでお弁当を持って浜で食べたり飲んだり、潮が引けば、潮干狩りをして楽しむ、というのがよくある風景です。
私が移住してすぐ(気づけば20年ほど前の話・・)の頃は、学校や役場も午前中で終わり、午後からはみんなで海へ繰り出していたもので、私も島の方々に「海に行かないとカラスになるよ〜」と言われて、???、となりながら、島の皆さんに海へ連れて行ってもらったものでした。
誰もが楽しみにしている特別な日だったのですが、最近は高齢化と人口激減に伴い、ライフスタイルも様々になってきたので、そのような光景もあまり見られなくなり、こぢんまりと楽しむ方が多くはなりましたが、それでもやっぱり「春の大潮」はワクワクするものです。

サンガツサンチは春の大潮。はて、【大潮】ってなあに?

海は、1日2回干潮・満潮を迎えます。潮の満ち引きは、月の引力によって引き起こされ、満月・新月の時は大きく、半月の時は小さくなります。満ち引きが大きい時を「大潮(おおしお)」小さい時は「小潮(小潮)」、真ん中が「中潮(なかしお)」といいます。
干満差はエリアや季節によって異なりますが、加計呂麻春の大潮の干満差、大きい時はなななんと200cm超え!!
つまり、干潮で立っていられたエリアは満潮時には背丈以上に海水に浸かってしまうのです。潮干狩りをしなくとも、そのダイナミックな海の変化は一見の価値アリです。

サンガツサンチの海のツアーはどうなるの?

「ダイナミックな海の変化は一見の価値アリ!!」
なんて、書きましたが、実は、海のツアーには手強い自然現象なのです。
だって、200cmもの水が動く、、ということは潮の流れがとても早く、場所によっては川のように流れるのでシーカヤックやシュノーケリングには不向きですし、珊瑚礁が発達した海岸線では強い潮の流れによって大きな波が起きたり、珊瑚が干上がって顔を出してしまうので、浜に上陸したが最後、潮が満ちてくるまでその浜から身動きは取れません。
私たちがいつも利用する外海側のビーチはほぼ全滅。

でも、どんな状況でもポイントを選べば楽しめるのが、複雑に入り組んだリアス式海岸の加計呂麻の海。
そんな逆境を利用した楽しいツアーを開催しました!

この日は、カヤック仲間6人組の仲良しチーム。漕ぐのは大好き、ということで、スペシャルプランをご用意。

満潮時は加計呂麻の秘密のマングローブへ。

加計呂麻のマングローブは、陸路ではアクセスできないので人がほとんど入ることがなく、こぢんまりとした美しい空間にみっちりと生き物たちがのびのびと生きる美しいエリアなのです。

干潮時には加計呂麻と繋がった無人島に上陸してお散歩!

加計呂麻の周辺にはいくつか無人島がありますが、ここは大潮の干潮時だけ加計呂麻と繋がる1周600m弱の可愛い無人島。

帰り道にはなんとイルカの群れにも遭遇

幸運にも恵まれた、ぐるっと16kmの愉快なツーリングでした。

悩ましい自然現象がゆえに味わえた景色。

晴れでも雨でも、大潮でも小潮でも、その日その時にしか出会えない景色をたっぷり楽しみたいものです。

余談)海に行かねばカラスになる?!

私たちが暮らす加計呂麻島では、サンガツサンチに海に触れないと「カラス」になると言われており、私たちはゲストがいらっしゃらなくても、お天気が悪くても必ず海へ入るようにしています。島の方も、お仕事の合間に足だけ浸ける人もいるとかいないとか。(他の地域では、フクロウになるなど諸説あります)
?なんでカラス・フクロウ?
島の方にお聞きしても、「さあ、なんでかねえ。でも昔からそんな風に言うよ」と、よくわからない、、という方が多かったのですが、少し調べてみると、こんな記事が出てきました。
加計呂麻では昔から、海は浄化する場所として捉えられており、’’この日は海へ行かないと悪いものが憑く’’として、厄除け的意味合いがあり、カラスは真っ黒な鳥でやや不吉なことを連想すること、フクロウは夜に活動するので、人ならざる物になる、というような意味で言われる、とのことでした。
カラスやフクロウがちょっと可哀想な気もしますが、「海に行かないとカラスになるよ!」という言葉が飛び交うサンガツサンチは加計呂麻らしくて、なんだかいいのです。